2010年01月18日

図書館を見に行く

置戸町に行く。
「おけとちょう」である。
人口約3,700人。
図書館を見るのである。

農林業と工芸の町・置戸町。
北海道の北東部、常呂郡に位置する。
町の80パーセントが森林だという。
けれどもその小さな町の図書館が、数年前、日本図書館協会建築賞を受賞した。

早朝5時に札幌を出発。旭川を経由して石北峠を越える。
車でたっぷり6時間はかかる道のりだ。
高速道路を利用すれば、もう少し早く、到着するのだろう。
しかし急ぐ理由はない。
車でたっぷり6時間かける。

町を貫く国道242号線から、一本入った道路沿いに、図書館がある。
けれどもここで悲しい事実が判明。
休館日なのである!
呆然と、立ちつくすこと、1、2分。
除雪車がゆっくりと通りすぎていく。

気をとりなおし、ガラス張りのエントランスから、内部を覗く。
すぐに目につくのは大きな梁だ。地元産のカラマツで組まれた弧状の大きな梁が、何本も何本もわたされて、開放感のある高い天井を支えている。それに対して書架は低くしつらえられている。視線をさえぎるものはない。
一冊一冊の背表紙までは見えないが、それでも図書館全体があたたかく、親しみのもてる空間に見えるのは、採光が巧みになされているためだろう。
薪ストーブを囲む読書コーナーには、ゆったりとした間隔で、アームチェアが並んでいるのが見える。館内のインテリアの多くは地元の工芸作家の手によるものだという。このアームチェアも、きっと、彼らの作品なのだろう。

素晴らしい図書館。
しかし、である。

しかし、そこに、読書する者の姿はない。
暖炉のまわりでくつろぐ者の姿もない。
薪のはぜる音も、アームチェアに投げ出された脚もない。
ページをめくる指も、背表紙をたどる指もない。
ただ本だけが、どこまでも、どこまでも、並んでいる。

そして無人の図書館の中で、本たちには、なにより個別の影がないのである。
館内はほの暗い。
まるで、ページや背表紙や梁や柱や棚になる前の、巨大な一塊の樹木のように。あるいは、文字の上に文字が書かれ、その上にさらにまた文字が書かれ、行間が全く消滅してしまった一冊のフシギな書物のように。立ち入ることも読むこともできない、物の集積として、図書館はただそこにある。
それは、たとえば「歴史」だとか「記憶」などと呼んでしまうには、あまりにもずんぐりとして、不恰好で、あたたかいものだ。

★★★

冬至を過ぎたばかりの山間の町に、しんしんと、雪が降っている。
除雪車が、また、ゆっくりと通り過ぎていく。
なぜか少ししょんぼりとして、たっぷり6時間かけての、帰路につく。


     by ima.

posted by 面 at 00:00| Comment(0) | 名づけえぬもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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