2009年12月14日

ブラザーズ・グリム

          brothers_grimm.jpg

テリー・ギリアム監督、2005年の作品。

マット・デイモン演じる兄ウィルと、ヒース・レジャー演じる弟ジェイコブ。

グリム童話で知られる実在の兄弟は、
兄がヤーコプ、弟がウィルヘルム。

この逆転は、この物語が一種のパロディであることの印でしょうが、
通して見てみるとこれが、
単にパロディという言葉では括りきれないような作品。

童話作家として、というよりは民話採集者(民俗学者)としての彼らの仕事の意味を
ドイツ、ひいてはヨーロッパの文化史的・精神史的な観点から捉えた上で、
伝記的事実とはかけ離れたファンタジックな物語の中に彼らを置きなおす、
という、かなり手の込んだ遊びが認められます。

キリスト教と啓蒙主義の双方から忌避され、
「あってはならないもの」とされてしまった精霊信仰(アニミズム)と魔術的世界観。

その象徴である「呪われた森」の中で通用するのは、
この作品では支配者たるフランス人が代表しているところの「書かれた理性」の文化ではなく、
狩人の娘、アンジェリカ(レナ・ヘディ:下のポスター写真、右)が代表しているところの、口頭伝承による民俗知識。

つまり、まさに実在のグリム兄弟が掘り起こそうとしたものです。

          brothers_grimm_ver6.jpg

兄弟がアンジェリカと協力して森を呪いから解く(=森を守る)行為は、
見た目上は単なる化け物退治に見えますが、
実在のグリム兄弟がいわばペンによって行った闘いの、
ちゃんとした表現になっている。

公開から4年も経って言うのもなんですが、
テリー・ギリアムってやっぱりすごいじゃん、と思いました。

ちなみに村に平和が戻ってきた、というラストのチャプターの冒頭、
映し出される十字架は、
クロスの中央部に円が加わった、ケルト十字を思わせる形。

ひょっとすると、作品中の悪役、フランス人たちが濃厚に継承するローマ(カトリック)的キリスト教の伝統とは異質の、
よりアニミズム的傾向をもつケルトのキリスト教(※)に対する積極的評価を込めたのかもしれません。

一般的なケルト十字そのものズバリじゃないので、
これはちと、読み込み過ぎかもしれませんが。。。。
(この辺り、ご存知の方いらしたらご教示ください)

エンディング近く、喜びに沸く村人が奏で、踊る音楽が、
ユダヤの伝統音楽クレズマーなのも(これもたぶん、だけど)、
それをバックに交わされるグリム兄弟の会話と相まって、
色々考えさせられます。

  弟:「現実の世界は厳しい。
     故郷ももたず、国家を敵に回し、名も成していない。
     ・・・良い名前なのに」

  兄:「最高の名前だよ!」

※  アリスター・マクグラスは、
    古代におけるケルト的キリスト教の神学的特質について、
    「神を知る手段としての自然界の重要性を強調した」点に注目しています。
    (『総説・キリスト教』キリスト新聞社、2008年、378頁)

     by 堀マサヒコ


posted by 面 at 00:35| Comment(0) | お薦め | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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